ChaboのFF11日記+(跡地)

IfritサーバでFF11をやっていたChaborinの日記でした。

FF11不評の原因と自己肯定感の関係 第4回

コミュニティからの視点 - なぜFFコミュニティは匿名BBSが主流か?

なぜFFが糞糞言われるのか?という点については、当然2ちゃんねるを頂点とする匿名BBSの存在が少なくありません。
では、FFコミュニティがなぜここまで荒廃してしまっているのかについて考察します。

「晒し」が行われる匿名BBSの書き込み心理

私たちBloggerは、人にもよるけどだいたい自分のキャラクタの名前は公表します。そうでないと日記にならないからです。しかし、匿名BBSでは自分のキャラクタ名は公表しないのが流儀です。それどころか、匿名BBSの場でキャラクタ名が公表されることは、「晒される」という意味であり、蔑視の対象となります。
ではなぜここまで匿名BBSでは極端に名前が公表されないのか。
この問題を紐解くためには、匿名BBSに関する研究から始めなければなりません。なぜなら、人間の表現欲求に関する部分が関わっているからです。
こちらに足を踏み入れると大変なので簡単に言うと、「匿名BBSは最も書くことに対して抵抗感が薄いメディアである」ということです。私は誰ですということを言わなくていいから、表現(書き込み、いわゆる「カキコ」)に責任が持たれない。間違ったことを書いても、その間違いの責任は書き込み者ではなく書き込みそのものに対して付与され、せいぜい「>>241は馬鹿」とか「氏ね」いった書かれ方しかされません。つまり、書き手に対するダメージが少ない
逆に表現の中に素晴らしいものがあると、それは発言番号(スレ番)と共に「神」と称されることになります。ここで注意したいのは、その表現は人格に対して行われているのではなくて、あくまで表現に対して行われているのが特徴です。しかしながら、人間は拡大解釈を行って自分に対しての賞賛として受け取ります。すなわち、名誉を伴わない他者評価による自己満足が発生するわけです。しかし、これはある意味現実社会においてはではイビツなものです。賞賛されれば名誉も付くが、ここでいう賞賛は現実生活にはまったく影響がない。このいびつさを補って余りあるのが、自分が(精神的・物質的に)傷つかないようリスクコントロールできる匿名であり、匿名掲示板への書き込みなわけです。

なぜ匿名BBSがメインの情報収集手段となり得たか

さて、FFでは匿名BBSがメインの情報手段となってしまっていますが、なぜこうなってしまったのでしょうか。
今も昔もかわらず、MMOをはじめとしたゲームで重要なのはそのゲームシステムについての攻略情報です。つまり、作り手側が用意した仕掛けをいかにして引き出して遊ぶかということ。
この攻略情報の出自でいちばん最初に浮かぶのは出版社です。出版社は少数のスタッフで素晴らしい作りの本(アルティマニア等)を出版します。がんばって良質の本にするために何人か(時に何十人か)のスタッフが徹夜気味に頑張るわけです。しかし、この「出版物」という情報を出せるのは一部の出版社にすぎず、しかも一部の限られた編集員の努力にすぎません。
これに対して、匿名BBSではその書き込みの気楽さ、責任のなさ、そして書き込みに対してとは言え、私も「神」になれるといった願望、つまり自己表現願望によって書かれることになります。その結果、攻略情報はバザールモデルで次々と表現され、あっという間に「まとめサイト」という形で集積され、結果として出版物とは比べ物にならないスピードで情報が伝達することになります。これはある意味では匿名BBSの「功」にあたる分野でしょう。
もっとも、この状態はゲーム制作者側から見るといまいましいものかもしれません。なぜなら、もはや用意された筋書きや隠されたフューチャーはほとんど意味をなさないものとなってしまうからです。隠し情報を作ったとしてもせいぜい1週間、長くても1ヶ月程度で全ユーザ共通の認識となってしまいます。この状態は基本的にシナリオ部分で非常にMO寄りのMMOであるFFは、大変不利な状況だと言えます。なぜなら、作ったものがあっというまに攻略されてしまうからです。

素早い情報伝達が「行われなかった」ために起こった事件

さて、逆に制作者側が意図していた「情報伝達」が正常に行われなかった笑えるエピソードもあります。それは、プロマシアの呪縛によって誕生したシャイル装備のレシピです。
当時■eは、この高レベル吟遊詩人が装備できるシャイル装備のことを、プロマシアの呪縛発売と同時に登場する装備として、大々的に宣伝していました。
しかし、この装備は当初隠しレシピだった上、材料の一部に大変高価なレアドロップ品を使った合成だったので、合成職人の必死の捜索にもかかわらず、発見されることなく1ヶ月が過ぎてしまいました。
この間、したらばの合成職人があつまる掲示板では「シャイル装備は未実装だ」と喧伝され(なぜ「未実装」と断定されたかというとレベル3連携事件の影響があると思います。レベル3連携事件はまた別の機会に)、結果として隠しレシピでないように■eが次のパッチで修正するという事態になりました。見つからないことによるダメージもまたある、というわけです。

UOとFFのコミュニティ形成の違い

では、UOではどうだったでしょうか。
UOはまだ2ちゃんねるの黎明期以前にコミュニティが形成されたこともあり、良質なサイトが多数Internet上に存在し、また現在も存在しつづけています。だいぶ廃れてしまいましたが「うるうる」等の老舗情報サイトは未だに続いています。


しかし、いまひとつの視点として、UOとFFにはコミュニティの形成に決定的な違いがあります。なぜなら、厳密に言うと、UOには決定的な攻略はありません。つまり、「情報を知る」ことによって有利になる要素がそれほど多くないのです。世界地理、生産のやり方、スクロールの作り方だとか魔法の覚え方だとか、そういった誰でも知っていなければならない基本的な情報が多くあり、それ以上の情報が存在しない。
FFは違います。攻略情報はオフラインゲームと同じ軸で存在しており、知っていない人は可哀想なくらいです。
つまり、FFは「情報を一部に隠し、だけど知っていなくても一応ゲームができる」状態で放置し続けた結果、その隠し要素を知るために最も最適な方法 - 匿名BBSでのバザールモデルによる情報収集 - を誘発しやすいゲームデザインになっているのです。
別の要素もあります。UOではソロ活動できることはそこそこ多いし、内部のコミュニケーション手段は極めて貧弱であるため、ある程度まとまった形での通信手段(すなわち、ギルドのホームページ)を持たざるを得なかったという点があります。対してFFでは、世界各地どこにいたとしても、例えボス戦やイベントの真っ最中であろうとも、LSという通信手段でメンバー間のコミュニケーションを確保できます。こうなったら、外部でコミュニケーションツールを使う必要がありません。
この方針は、PS2ICQMSNメッセンジャーを使えないユーザに不利にならないようにするため、最低でもPOL上で全てのコミュニケーションを囲い込みたいという■eの思惑があったのでしょう。PC版のFFがウィンドウ化できないような設計にして外部の通信手段とシャットアウトされるようなあるのも、この設計思想から来るものです*1
このような制限された状況でも、ゲーム外のコミュニティ生成ツールとして、瀬野部屋さん作のGuildmember.cgi等で情報を蓄積する手段はある程度あります。だけど、せいぜいそれだけです。確かにGuildmember.cgiは大変優れているcgiですが、私はこれ以外にFFのメンバー情報蓄積ツールを見たことがありません。しかも、そこで構成されるBBSや日記は大部分があまり更新されず、当初は活発だったとしてもしばらくすると廃れていきます。大規模MMOと言われるFFで、なぜここまでコミュニティが生まれないのでしょうか?
なぜなら、そのツールはゲームプレイやLSの維持に必要不可欠ではなく、主要なコミュニケーションはほとんど全てゲーム内でできてしまうからです。
そして、この傾向はゲーム外コミュニティの形成という点では致命的な結果 - 匿名BBSだけあれば他はいらない - という結果をもたらしたわけです。

結論

結論として、そうなるようには全く意図していなかっただろうにもかかわらず、FFのゲームデザインは奇しくもありとあらゆる面において匿名BBSでの情報交換が主流となるよう設計されてしまっていると言えるでしょう。


この先FFのコミュニティがどうなっていくかわかりませんが、少なくとも最近のBlogブームが良い方向に動かしてくれることを願っています。




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*1:今はWindowerに代表されるいろいろなウィンドウ化ツール出てきて、その前提も覆されてしまいましたね。